私はお漬け物屋の娘として生まれました。小学校から帰るとランドセルを背負ったまま、工場のお漬け物をちょいとつまみ食い。のどかな時代、いつもお漬け物が身近にある生活でした。
家業の手伝いがこれまた大変。クリスマスの頃はお正月用のお漬け物作りのピーク。一家総出で製造しますから、遊べないわ、手は冷たいわで、毎年憂鬱な時期。今でもなますを見るとあの時の手の冷たさを思い出して体がブルっとします。
そんな幼少期を過ごした私ですが、人生とは不思議なもの。北杜食品の商品を開発する際にさまざまな食品に触れ、発酵食品の素晴らしさにどんどん惹かれて行きました。
特に日本特有の麹が持つ力はすごいです。食材そのものの栄養や味を引き出しながら、料理が簡単に美味しくなるのです。麹を学べば学ぶほどもっと知りたくなって、発酵マイスター、上級麹士、ぬか漬けソムリエなどの資格を取得しました。ぬか、米麹、塩を混ぜたぬか床に野菜を漬けておくだけで、乳酸菌がどんどん増えておいしいぬか漬けになるなんて、気づいた昔の人の素材を生かす力は本当に素晴らしいと思います。
最近では塩麹、甘酒、ぬか漬けがブームになっています。麹というとみそやしょうゆの調味料や、お漬け物に入っているものと思いがちですが、肉や魚にもバッチリ合いますし、麹を配合したトマトやオニオンのソースなどもとても美味しいので試してみていただきたいです。
もっとおいしく、簡単に、麹をみなさんの毎日の食事に取り入れていただきたくて、私の頭の中は麹でいっぱいなのです。